地方分権の意味


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Posted by 金明秀 on April 12, 1997 at 05:50:31:

In Reply to: 見当違いでしたらすみません posted by 大塚恒平 on April 11, 1997 at 22:33:46:

:  でも、日吉さんは地方分権という視点からこの問題を扱っておられますし、明秀さんもそ
: ちらの方面での議論の方が好きなようでそっち方面に行かれてますけど、私は何かこういう
: 議論は違和感というか、非現実感を覚えます。
: たんに自分が知識もなく、そっち方面の発想が出来ずついていけないから、リアリティを感
: じないだけかもしれないけど。


 うーん,できればこの話題はもう片方のスレッド(大塚さんの言う「そっち方面」ね ^_^)に投稿してほしかったが…しかたがない,こっちで話を展開していきましょう。

 大塚さんの疑問については,2つの方向から返答しましょう。

 <まず第一点目>

「リアリティを感じない」のは,ある意味で当然とも言えます。というのも,地方分権の文脈にのっとった参政権の議論は,“政治を市民の手の届くところに取り戻す”,ひいては“今後の日本をより良くする”といった壮大なプログラムの一部だからです。

 この文脈からいえば,在日問題を解決するといったことは,ある意味で狭小な視点でしかありません。#381の前半や#403はそういう主張ですね。でも,それじゃこのボードで論じる意味がありませんので,在日問題に引きつけて話をしましょう。

 大塚さんの言うように,かりに地方分権→地方自治が機能したとしても,在日韓朝鮮人の諸問題は解決されるとはかぎりません。むしろ地方によっては,憲法の範囲内で,現状よりも悪くなるところもでてくるはずです。地方公務員でいうと,いまやほとんどの自治体で認められている医師や看護婦などの専門職でさえ,外国人お断りと言い出すところも出てくるでしょう。鹿児島県なんて,全国の流れに逆行して(先駆けて?),外国人の地方参政権に反対する決議を出してたりしますしね。

 もちろん,そういう事態になれば,その地域でそういう動きに反対するような運動は起こるでしょうし,また起こさなければならないと考えます。しかし,それでもなおかつ,その地域の人々がほんとうに外国人の権利制限を望むなら,僕はそれもある意味でしかたがないと思うわけです。

 もし,その地域に根付いた在日側の問題提起があっても,その地域の日本人がそれを問題と認識せずに,逆に排除するような図式があるとすれば,それは,その地域の在日の努力不足であり,そして,排外的態度がその地域の特性なんです。

 そもそも「在日問題」というのは,日側が問題として提起したことを,本人が問題だと共感し,認知してはじめて「問題」として成立しうるものです。もしかりに,在日側が提起した問題を,日本人が共感しないままシブシブ受け入れるようなことがあるとすれば,それは「問題」の解決にすらなっていないわけです。ひとつの問題が消滅して,別の問題の火種ができるだけでしょう。

 話をもとに戻しましょう。なぜ地方自治が重要なのかということですが,僕は,在日と日本人を含めた地域住民が,目に見える人間関係や生活実感のなかから「問題」だと認識したことがあれば,それをちゃんと解決できるような政治システムであってほしいと思うんですね。

 でも,いまの破綻した政党政治を基盤とする国政は,そういう仕組みではない。だいいち,目に見える人間関係や生活実感のなかから「問題」だと認識したことを処理するには,国政では図体が大きすぎるんですよ。そうした問題は,地方レベルで処理するのが望ましい。ということです。


 <つぎに第二点目>

 #396で解説したように,すでに外国人の地方参政権問題は憲法をクリアして,あとは法改正を残すのみとなっています。実際,95年ごろですか,各政党のなかに外国人の地方参政権を議論する政策チームがつくられ,一時はすぐにでも認められそうな雰囲気でした。ところが,やっぱり揺り戻しがあったんですね,自民党の内部で。そして連立政権の枠組みを重視した他の諸党も,その揺り戻しに追随してしまったわけです。

 もう少し,詳しく説明しましょう。

 各党に政策研究会ができた当初は,社会党(当時)よりも,むしろ自民党の担当のほうが,この問題に乗り気だったと聞いています。社会党は,選挙権はみとめるけど被選挙権は認められない,という主張だったんだけど,自民党の担当者は,やるなら被選挙権もセットで,という主張だったと聞いています。

 しかし,その後,自民党の内部から批判が出てきます。――「地方といっても,国政とは不可分じゃないか。」「韓国で認めてないものを,どうして日本だけやる必要があるんだ。やるなら相互主義が原則だ。」――

 相互主義のほうはほとんど感情論ですから,ここでは議論しません。それより,とくに地方分権とのからみで重要なのは前者の意見でしょう。つまり,いまの日本の地方政治は国政と切り離せない,というのが一つの強力な反論だったんです。

 というわけで,在日韓朝鮮人の地方参政権を獲得するという戦略面においても,地方政治を地方に取り戻すということに,一定の意味があるわけです。




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