Re: 国籍と参政権


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Posted by 廣 有人 on April 08, 1997 at 08:44:59:

In Reply to: Re: 国籍と参政権 posted by 金明秀 on April 06, 1997 at 16:32:57:


: :  国でも地方でも同じことだと思います。外国人に参政権を与えるかど
: : うかは政策にかかっているだけです。地方政治に限れば国籍は関係ない
: : かのように錯覚するのはまさにその自治体が自治体にすぎず国家ではな
: : いからでしょう。仮にその自治体が国家であればその国籍を持たなけれ
: : ば参政権は得られないでしょう。しかし自治体は国家ではないので「国
: : 籍」の取得ではなく「住民」となるだけなのでいわば二重国籍のような
: : 状態になります。二重国籍状態は共同体にとって望ましいものではない
: : のですが、いかんせん自治体にはそれを解消する能力はありません。そ
: : うなればよりましな二重国籍状態を選び取るのが当然でしょう。そうす
: : ると「住民」であることのほかに持つ「国籍」についてはその自治体の
: : 属する国家の国籍に限るとしてもむしろ当然です。つまり自治体の国家
: : からの独立の程度に関わらずよりましな状態として国籍を問題にすると
: : しても順当でしょう。

:
:  ようするに,(外国人の地域居住者は)「いわば二重国籍のような状態」であり,「二重国籍状態は共同体にとって望ましいものではない」ということだと思います。

 上のパラグラフの主題はこのようなものではありません。これは地方政治に限
れば参政権の取得に国籍は関係ないかのような論調に対しなされたものです。要
すれば、地方自治体はよりましな二重国籍状態を選ぶので、地方自治体にとって
「国籍」は意味がないとはいえない、ということです。それに「いわば二重国籍
のような状態」は外国人に限ってはいません。

 この部分に対する反論としては、これこれの理由により地方自治体にとって
「国籍」は意味がない、というものになるはずです。ところが、

:  地方自治体に「国籍」というメンバーシップは意味を持ちませんので,

という具合に結論となるべきものがいきなり前提として現れているので反論にな
っていません。

:ここでいう「二重国籍」とは,「二重帰属」と言いかえるべきでしょう。外国籍を保持する者は,その国にいつか帰る可能性があるわけで,したがって現在の居住地の他に,潜在的な居住地があることになる。そういう“二足のわらじ”を履くような中途半端な者にメンバーシップを与えるのは,コミュニティにとって望ましくない,ということが言いたかったのですよね?

 「二重帰属」が問題であるのは「現在の居住地のほかに,潜在的な居住地があ
る」からではありません。どの構成員であってもその共同体を離れる可能性はあ
るのだからそのようなことに意味はないでしょう。「二重帰属」(競合する二つ
の共同体に同時に帰属すること)が問題であるのはその構成員に対してどちらの
共同体が権利を持つのか、ということのためです。

:

  1. 地方自治体を市町村レベルだと細かくとらえたとしても,永住住民のみによって構成される「コミュニティ」なんて,日本にどれだけあるというのでしょう。単身赴任で出張中の方や,大学に通うために実家を離れてアパートに住んでいる方なども,現在の居住地の他に潜在的な居住地をもっているわけですから「二重帰属」にあたります。もっと言うと,その地域への永住意識を持たない人は,すべて「二重帰属」状態にあると考えられます。

     これは実質と形式の不整合の問題のようであり、この場合は形式(住民登録)
    にしたがって帰属共同体が決せられるのでこれもまたいわゆる「二重帰属」の問
    題ではないようですが。

    :それはたしかに,「コミュニティ」にとって一般に望ましいことではありませんが,だからといって参政権を剥奪しろという話にはなりませんね?

     だから剥奪しろなどと主張してません。くどいようですがまた書きます。

     参政権は国民固有の権利である。
     したがって国民には必ず与えなくてはならない。
     ところが外国人に関しては規定がない。
     したがって与えても与えなくてもよい。

     国家は形式にしたがってその構成員(国民)を決定する。
     条理として、あらゆる共同体はその統治的権能をその構成員にのみ与える。
     したがって参政権が国民にのみ与えられるとしても順当である。
     外国人は帰化して国民となることができる。
     外国人という立場で参政権を得なければならない必然性はない。
     したがって外国人は帰化によって参政権を得るのが原則である。

     これは地方政治においても同様である。
     (厳密にいえば地方自治権は国民固有の権利とすらいえない)
      
     帰化のあり方に問題があってもこの原則とは関係ない。
     それはそれで別の問題である。

    :

  2. 日吉十郎さんへのコメントにも書きましたが,地方政治への参加を強く求めているのは,じつは実際に居住地域の活動に積極的に参加している人であって,「二重帰属」どころか,住んでいる地域に意識のうえでも行為のうえでもちゃんと帰属している人たちなんですよね。在日は自営業が圧倒的に多いということもあって,じつは日本人よりも地域への定着率は高い。生まれてからずっとその土地で育ったという人も少なくはないわけです。

     しかし国家も自治体も形式にこだわるのでこのように実質的に構成員であって
    も、構成員たる形式を整えなければなかなかそれと認めてもらえないでしょう。

    :それを,外国籍だけをもって「現在の居住地の他に,潜在的な居住地がある」と考えるとすれば,

 そんなふうには考えていません。

:  「在日外国人に参政権を与えるかどうかは政策によって任意に決めることができる」までは同意します。また,在日の帰国が(少なくとも理念としては)前提にされていた70年代前半までなら,「現在の居住地の他に,潜在的な居住地がある」と考えるほうが自然でしたので,「参政権の付与を国民に限ってもむしろ当然である」という結論もそれを論断するだけでよかったと思います。

 帰るとか帰らないとかが問題なのではありません。帰国を前提にした覚えはあ
りません。また外国人という立場で参政権を取得しなければならないような必然
性はありません。

:が,現在はそうじゃない。廣有人さんがいうところの「現時点での諸前提、その他条理」は,もう古いのですよ。

 この「もう古い」というのは「すでに過去のものである」、「今では無効であ
る」、「もはや主流ではない」といった意味のはずですが、とてもそうは思えま
せん。それらが古いというのなら、

:  「在日外国人に参政権を与えるかどうかは政策によって任意に決めることができる」までは同意します。

といはうのはおかしいでしょう。もはや外国人にも参政権を与えなくてはならな
いはずですから。それに地方参政権に限定するのもおかしいことになります(も
ともとおかしいのですが)。もっともこれは最初から国政への参政権獲得は難し
いとの戦略的判断からとりあえず地方に限定しただけの政治的妥協かもしれませ
んが。




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