Re: 国籍と参政権


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Posted by 金明秀 on April 06, 1997 at 16:32:57:

In Reply to: Re: 国籍と参政権 posted by 廣 有人 on April 06, 1997 at 07:35:53:

 僕が前回投稿した,以下のくだり。

「その論法で言うならば,地方公共団体というある種の共同体が,その構成員に参政権を限定するのも当然ですね。国籍にかかわらず,地域住民は地方公共団体の構成員ですから,現在争点になっているように,地方参政権の国籍条項を撤廃することについては,なんら問題がないということになります」

 ここは,じつは「国籍にかかわらず,地域住民は地方公共団体の構成員ですから」という部分についてどういう反応があるかを確かめるために書いたものでした。感情的な反発であれば,発言の背後にあるのは排外主義にほかならず,これ以上議論するに値しない。挑発的な文章をつづけたのも,その種の反応を率直に引き出すためでした。

 一方,理路整然と反論してくださるのであれば,その話を聞いてみたいという思いがありました。というのも,僕自身,上記の引用部分にどこかスッキリとしない違和感を覚えるからです。

 そこで,まずこの部分についての廣有人さんの反論を引用してみます。


:  国でも地方でも同じことだと思います。外国人に参政権を与えるかど
: うかは政策にかかっているだけです。地方政治に限れば国籍は関係ない
: かのように錯覚するのはまさにその自治体が自治体にすぎず国家ではな
: いからでしょう。仮にその自治体が国家であればその国籍を持たなけれ
: ば参政権は得られないでしょう。しかし自治体は国家ではないので「国
: 籍」の取得ではなく「住民」となるだけなのでいわば二重国籍のような
: 状態になります。二重国籍状態は共同体にとって望ましいものではない
: のですが、いかんせん自治体にはそれを解消する能力はありません。そ
: うなればよりましな二重国籍状態を選び取るのが当然でしょう。そうす
: ると「住民」であることのほかに持つ「国籍」についてはその自治体の
: 属する国家の国籍に限るとしてもむしろ当然です。つまり自治体の国家
: からの独立の程度に関わらずよりましな状態として国籍を問題にすると
: しても順当でしょう。


 ようするに,(外国人の地域居住者は)「いわば二重国籍のような状態」であり,「二重国籍状態は共同体にとって望ましいものではない」ということだと思います。残念ながら,これは僕が期待するような回答ではありませんでした。

 地方自治体に「国籍」というメンバーシップは意味を持ちませんので,ここでいう「二重国籍」とは,「二重帰属」と言いかえるべきでしょう。外国籍を保持する者は,その国にいつか帰る可能性があるわけで,したがって現在の居住地の他に,潜在的な居住地があることになる。そういう“二足のわらじ”を履くような中途半端な者にメンバーシップを与えるのは,コミュニティにとって望ましくない,ということが言いたかったのですよね?

 もし僕の解釈があたっているなら,容易に反論することができます。

  1. 地方自治体を市町村レベルだと細かくとらえたとしても,永住住民のみによって構成される「コミュニティ」なんて,日本にどれだけあるというのでしょう。単身赴任で出張中の方や,大学に通うために実家を離れてアパートに住んでいる方なども,現在の居住地の他に潜在的な居住地をもっているわけですから「二重帰属」にあたります。もっと言うと,その地域への永住意識を持たない人は,すべて「二重帰属」状態にあると考えられます。それはたしかに,「コミュニティ」にとって一般に望ましいことではありませんが,だからといって参政権を剥奪しろという話にはなりませんね?
  2. 日吉十郎さんへのコメントにも書きましたが,地方政治への参加を強く求めているのは,じつは実際に居住地域の活動に積極的に参加している人であって,「二重帰属」どころか,住んでいる地域に意識のうえでも行為のうえでもちゃんと帰属している人たちなんですよね。在日は自営業が圧倒的に多いということもあって,じつは日本人よりも地域への定着率は高い。生まれてからずっとその土地で育ったという人も少なくはないわけです。それを,外国籍だけをもって「現在の居住地の他に,潜在的な居住地がある」と考えるとすれば,ある種,排外主義に通じる無理解だと言えるでしょう。


:  結論として、「在日外国人に参政権を与えるかどうかは政策によって
: 任意に決めることができるが、現時点での諸前提、その他条理からいっ
: て参政権の付与を国民に限ってもむしろ当然である。したがって在日外
: 国人が(国、地方に限らず)参政権を得るためには日本国籍を取得する
: のが原則であり、もっとも順当な方法である。」ということになりま
: す。


 「在日外国人に参政権を与えるかどうかは政策によって任意に決めることができる」までは同意します。また,在日の帰国が(少なくとも理念としては)前提にされていた70年代前半までなら,「現在の居住地の他に,潜在的な居住地がある」と考えるほうが自然でしたので,「参政権の付与を国民に限ってもむしろ当然である」という結論もそれを論断するだけでよかったと思います。が,現在はそうじゃない。廣有人さんがいうところの「現時点での諸前提、その他条理」は,もう古いのですよ。

 政治の代表者たちが,かりに,そういう古い考えに固執して在日外国人に参政権を与えないと決めるとしても,それは自由です。でも実際には,多くの地方政治の代表者たちが,外国人の地方参政権付与を求める決議書を採択していますよ。


:  日本国籍の取得に際していくつかの問題がありますが、だからといっ
: て上の原則を無視すべきでないと思います。むしろ逆にこの原則を守る
: 方向で、国籍取得に関する問題を解決することで参政権の問題も解決す
: べきだと考えます。基本的にはいかなる人間であっても特に審査なしで
: 国籍が取得できるようにすべきだと考ます。まさに私がそうであったよ
: うに。


 僕には,日本国籍取得にともなう問題が「いくつか」だとはとても思えませんね。僕は廣有人さんとは逆に,国籍の付与にさいしてはちゃんと審査をおこなうべきだと思いますが,ようはその審査の内容でしょう。

 ところで,現在の11歳以上で,審査なく日本国籍が取得できたのは,両親か父親が日本国籍をもつ場合,もしくは国籍が特定できない子のみです。「審査」がどうこうだという以前のケースだけですね。




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